病棟に1人で出向くことで自覚も高まる

東京都にある600床規模の民間病院では、知的障害や精神障害のあるスタッフ10数名が雇用され、人事課のチームに所属して院内各所で働いています。この病院では、患者の平均在院日数が短くベッドの入れ替えも多いため、障害のあるスタッフの仕事もベッドメイクなど病棟関係が多くなっています。障害者雇用を積極的に進めるようになった背景にも、看護助手の確保が難しくなってきたことがあるそうです。

知的障害や精神障害のあるスタッフを多数雇用している病院では、専従のジョブコーチを配置しているところも多いですが、この病院では人事課の職員が人事業務の傍らで、障害のあるスタッフのサポートを担当しています。スタッフは、午前中は各自が担当する病棟に1人で出向いて、病棟の看護助手からの指示を受けて、ラウンジ清掃、ベッドメイク・清掃等の作業を行います。1人で作業できるよう、作業工程を詳細に写真入りで示したマニュアルを病院で作成し、清掃道具等とともにカートに取り付けています。

病棟では看護助手が作業の指示をするため、月1回の看護助手会議には人事課の担当者も出席し、指示の仕方などをアドバイスしています。例えば、「20分で終わらせて」と言っても伝わらないことがあるので、「何時何分までに終わらせて」と具体的な時間で示すといったことです。また、指示内容が口頭だけだと明確でないので、小さなホワイトボードを使って、その日の指示内容を書いてもらうようにもしています。

午前中はスタッフ全員がそれぞれの担当現場に出向いて作業するため、この時間帯にはサポート担当者は人事課での仕事に専念できます。昼食の休憩時間帯にスタッフは戻ってきて、午後からは作業室で病棟等から受託した作業を集団で行います。

専従のジョブコーチを配置するか否かは病院の事情にもよりますが、この病院では専従のジョブコーチを置かないことで、担当病棟に一人で出向くスタッフの自覚も促されているようでした。