仕事への熱意が広げる職域

関東地方にある公的病院では、精神障害のあるスタッフが数名雇用されていますが、そのうちの1名は薬剤部で働いています。数年前から薬剤部で勤務しているスタッフの業務は、当初は薬剤トレイの清掃が中心でしたが、その後、本人からの提案があった仕事を取り入れていった結果、仕事の種類も徐々に増えていき、現在では薬剤トレイの清掃は業務の3割程度になっているそうです。仕事のスピードが速くなるにつれ、薬剤部の仕事以外にも、入院案内の折りの作業など他部門からの作業依頼も入るようになりました。

薬剤部長さんにお話を伺ったところ、薬剤補助の仕事をしてもらい、薬剤師が本来の業務に集中できるため、大変助かっているそうです。薬剤部長さん自らが定期的に面談をされていて、長いときには1時間以上かけてじっくり話を聞き、面談記録もしっかり残されていました。面談の内容も様々で、薬剤部長さんのお人柄と合わせて、話しやすい雰囲気を作られていることに感心させられました。

本人に自分の強みと弱みについて聞いたところ、「強みは真剣に取り組むこと、弱みは頑張り過ぎて疲れてしまうことで、体調を崩して休んだりしないことを目標にしています」との答えが返ってきました。そのために工夫している点は、「毎日自分の体調を10段階で記録して、数値が下がってくると気をつけるようにしています。そうするようにしてから、体調を崩すこともなくなりました」とのことでした。この方法は、働き始めた頃にお世話になった就労支援機関のジョブコーチに教わったとのことです。

この病院には、同じ法人が運営する複数の病院があるので、こうした好事例を同一系列の他の病院にも知っていただくことが大切だと、訪問に同行いただいた法人本部の皆さんともお話ししました。