「朝の挨拶」から始まる

障害者雇用を始めた医療機関では、職場の雰囲気が良くなったという話を多く聞きます。その際に共通しているのは、彼らの挨拶が職場を変えたということです。毎朝の挨拶の大切さは、産業保健の専門家の間でも、特に注目されていることです。挨拶するということには、相手を1人の人間として尊重しているという、明確なメッセージが込められているからです。挨拶された相手は、「自分はこの職場にいてもいい存在なのだ」と自己を肯定的に考えることができます。

一方、お互いの挨拶もなく自己肯定感の得られない職場では、職員の間に孤立感が広まり、人間関係のトラブルが生じたり、体調不良で生産性が低下する職員も出てきます。こうした状況を放置すれば、患者さんへの対応という医療サービスの質の面にも影響が生じかねず、早急に改善したいところです。そのために効果が期待される具体的な対策の一つが、朝の挨拶なのです。そうはいっても、これまで挨拶が交わされていなかった職場では、いきなり挨拶するのに抵抗感のある職員もいるものです。挨拶しても挨拶を返してもらえず、かえってストレスが溜まることもあるでしょう。

そのような時に、障害のあるスタッフが職場に加わることで、大きな変化が生じます。特別支援学校や就労支援機関では、繰り返し挨拶の大切さが教えられています。「おはようございます」「こんにちは」「失礼します」といった挨拶を、相手の顔を見ながら一人一人に対して丁寧にすることです。相手が返事を返してくれなくても、繰り返し元気に声をかけ続ける姿は、彼らの持つ「強み」となっています。その「強み」を職場で活かせるようにすることで、最初は挨拶することに抵抗感のあった職員も、次第に自然に挨拶を返せるようになるでしょう。職場全体のメンタルヘルス環境が改善していけば、職員から患者さんへのちょっとした気遣いや声掛けもスムーズに行われるようになり、雰囲気の良い病院として地域での評判が高まることにも繋がるでしょう。