院内で拡がる精神障害のあるスタッフの職域

平成30年4月から、法定雇用率の算定基礎に精神障害者が加えられることもあって、精神障害者の雇用に関心が高まっています。医療機関で精神障害者が働ける職域にはどのようなものがあるか、知りたい医療関係者も多いことでしょう。

北九州市にあるJCHO九州病院は、病床数575床の高度急性期病院ですが、この病院では障害者を実数で20名近く雇用していて、そのうち約半数を精神障害者が占めています。以前は身体障害者を中心に雇用し、病院単体では法定雇用率相当の雇用数に達しないこともありましたが、知的障害者や精神障害者の雇用にも積極的に取り組むことで、現在では独立行政法人の法定雇用率(2.3%)を1%も上回る水準を実現しています。

知的障害や精神障害のあるスタッフには、それぞれの特性に合わせた仕事が提供されています。知的障害のあるスタッフ4名のうち、病棟で看護助手として働くスタッフは「メッセンジャー・シーツ交換等」、栄養管理室で働くスタッフは「調理補助」、事務部門で働くスタッフは「郵便物受付・発送準備等」を担当しています。

一方、精神障害のあるスタッフ9名は、障害等級では3級と2級が半数程度ですが、週20時間の短時間勤務は1名のみで、ほとんどが週30時間以上の勤務となっています。事務部門で事務補助として働く5名のスタッフは、「出張等各種申請手続き」、「議事録作成等」、「医局関係の事務申請書類作成等」、「消耗品発注等」、「現金回収・確認」といった業務をそれぞれ担当しています。病棟で看護助手として働くスタッフは「メッセンジャー・シーツ交換等」、「ベッド搬送・車いすの修理等」をそれぞれ担当しています。また、リハビリ部門で働くスタッフは「事務補助・ベッド搬送等」、健康管理部門で働くスタッフは「データ入力」を担当しています。

事務部門に議事録作成を中心的に担うスタッフがいるのは、この病院の特色でしょう。病院には各種の会議や委員会が設置されていて、毎回の議事録作成は事務部門の職員にとって負担の大きいものですが、この病院ではすべての会議や委員会の議事録作成を精神障害のある1人のスタッフが担っています。会議や委員会の数が多いため、毎月の議事録作成だけでも、一人分の仕事として十分な業務量となっています。本人の特性にも合っているようで、まとめ方も的確でスピードも速いため、周りの職員からも大変感謝されているそうです。当初は議事録作成のみが担当でしたが、今ではホームページのメンテナンス、委員会資料の準備など多くの総務関係業務も担当し、システム関係の業務も行っているそうです。

精神障害といっても一律ではなく、それぞれに得意不得意な分野はありますが、各自の特性を踏まえた仕事を院内の各部門から見出すことで、精神障害のあるスタッフが活躍できる職場は着実に拡げられそうです。