大切な仕事を「雑務」と呼ばないで

医療機関で障害者雇用を進めようとする際には、まず障害のあるスタッフにどのような仕事を担ってもらうか検討する必要があります。知的障害や精神障害のあるスタッフの場合、作業工程が単純で明確な作業だと能力を発揮できることが多いため、そのような作業を現場の仕事の中から切り出していくことになります。

先日開催された看護職トップリーダーを対象とした研修会のグループワークで、この問題について話合われた際、ある看護職幹部の方から、障害があるスタッフが担う仕事を「雑務」と呼ぶべきではないとの指摘がありました。確かに「雑務」という言葉には「本来の仕事とは直接関わらない雑多な仕事」といったイメージがあります。重要でない、面倒臭い、厄介といった否定的なニュアンスが伴うようにも思われます。「雑務」という言葉を使うことで、障害のあるスタッフに面倒くさい仕事を押し付けるといった、誤ったイメージが持たれかねないことを懸念されたのだと思います。国家資格がなくてもできる仕事であっても、病院を運営する上で欠くことのできない仕事という点では、何ら変わりがありません。医療機関の業務に欠くことのできない大切な仕事という基本を押さえたうえで、国家資格がなくてもできる仕事については、その仕事に強みを持つ人達に集中して担ってもらうことで、業務の質も高まるし、看護職も助かるという視点こそ、しっかり伝えるべきことなのでしょう。

こうした指摘には、周りの看護職への意識啓発だけでなく、この仕事に従事する障害のあるスタッフのモチベーションへの配慮も感じられ、さすが看護職のトップリーダーになる人達の意識は高いと、改めて感心させられました。障害のあるなしに関わらず、自分が医療機関のスタッフの一員として医療に貢献していることを、毎日の仕事の中で実感できることは大切なことです。周りの職員から「いつもありがとう」「ご苦労さま」といった感謝の声掛けやメッセージが日常的に届くことは、障害のあるスタッフの働く意欲にも繋がります。先進事例の医療現場で開拓された仕事を参考に、やりがいのある業務を上手に切り出していかれることを期待しています。