看護師の仕事が続けられなくても

看護師の仕事は激務と言われています。特に、夜勤を伴う病棟業務は、夜間に少ないスタッフで長時間対応するため、負担の大きい業務です。このため、子育てや介護等の事情を抱えていると、病棟勤務は難しくなります。子育て等に対する配慮は社会全体として進んできましたが、看護師の人材確保という観点からも、医療現場にはこうした配慮が不可欠となっています。夜勤のない外来部門や人間ドック部門等への異動により、退職せずに働き続けられる機会が拡がってきました。

看護師本人が病気や障害のために病棟勤務できなくなった場合も、同様に配置転換等で対応することが考えられます。もっとも病気や障害の状況によっては、正規職員の勤務形態で働き続けることが困難な場合もあります。このような場合にも、看護職として病院に残る道を選択できるようにしている病院があります。

東海地方にある公的病院では、様々な事情で正規職員として働き続けることが難しくなった看護職には、契約職員への切り替えを選択できるようにしています。その上で、原因となった事情がなくなれば再び正規職員に復帰できるなど、柔軟な対応をしています。

こうした対応は看護師として働くことが前提ですが、病気や障害の状況によっては看護師業務そのものが困難になる場合もあります。その場合には離職しか選択肢がないように思われがちですが、この病院では更なる選択肢として、看護職から看護補助職に職種を変更する道も残しているそうです。同じ病院内での職種変更は、職場の同僚の目も気になるでしょうし、国家資格を持つ専門職にはハードルが高い決断でしょう。それでも、離職して新たな仕事を探したり、不慣れな仕事に従事することで、心身に大きな負担をかけるより、職種変更で業務の負担を軽減した上で、慣れた職場でこれまでの経験を活かして働き続ける方が、本人にとって良い場合もあるのかもしれません。

この病院では、このように職種を変更して、看護師資格を持ちながら看護補助業務を行う方が何名かおられるそうです。先行事例が院内で温かく受け入れられたことで、こうした道も選択肢の一つとして受け止められているようです。

こうした職場復帰の場合は、障害の状態があっても障害者手帳を取得されることはあまりないため、障害者の実雇用率としては算定されないことが多いと思われます。一方で、手帳がなくても利用できる外部の就労支援機関のサポートや助成金制度もありますので、本人の状態に即した仕事を見出したり職場環境を整える際に活用いただくと良いでしょう。