ゆっくりペースも仕事の強み

医療機関で働く障害のあるスタッフの中には、障害のあることが仕事の上での強みになっている場合もあります。

中部地方にある民間の精神科病院には、以前その病院に入院して、現在も通院しているピアスタッフが十数名雇用され、様々な仕事に従事しています。この病院では、就労はリカバリーの重要な要素であるという考えのもとに、院内で働く機会を作ることにも力を入れており、短時間勤務からステップアップして、フルタイムで働いているスタッフもいます。

病棟で働くスタッフが担当しているのは、シーツ交換等の看護補助的な業務が中心となっています。この病院では、生活訓練的な意味合いから、シーツ交換などは入院患者もできる範囲で協力してもらっていますが、患者さんの中には動作が緩慢な方も多く、健常者の看護補助者だと待ちきれずにやってしまうこともあるようです。これに対してピアスタッフの場合は、もともと患者さんに近いゆっくりしたペースであるため、辛抱強く待つことができ、時間をかけて一緒にシーツ交換を行えているそうです。

同じ病気を体験したものとして、患者さんの気持ちが理解できることもピアスタッフの強みでしょう。患者さんにとってピアスタッフの存在は、身近なリカバリーのモデルとしても感じられているようです。退院して地域で生活しながら、他の患者さんに役立つ仕事をする道もあることを知ることで、退院や就労への意欲も高まるようです。

ピアスタッフの中には地域の一般事業所に就職していく者もいるため、ピアスタッフの仕事は一般就労に向けたステップという意味合いもあります。退院後の地域生活の先に具体的な就労の姿がイメージできることは、退院支援において大きな力を発揮するものと言えるでしょう。