看護補助業務での職域開発

従来は、病院での障害者雇用の職域というと、清掃、厨房補助、洗濯リネン、事務補助など病棟以外の業務が中心でしたが、最近では病棟での看護補助業務を担う例も増えてきました。看護業務の中には必ずしも国家資格がなくてもできる作業があり、これらの作業工程を実施しやすいよう再編することで、知的障害や精神障害のあるスタッフが安定的に働ける職域が拡大できるからです。

こうした動きの背景には、最近の景気回復に伴い、看護補助者の確保が難しくなってきているという病院側の事情もあるようです。特に大都市部では、看護補助者の確保に苦労している病院が増えているようです。医療機関で働くスタッフは有資格者が中心ですが、看護補助者として働く上では特段資格が必要ないため、他の産業分野の雇用条件が良くなると、病院の人材確保にも支障が生じてしまうからです。

必要な看護補助者が確保できなくなると、看護師の業務負担が増大するだけでなく、病院の収入である診療報酬にも影響が生じます。病院の施設基準には、看護職員が入院患者の一定割合勤務していることが要件となっていますが、これとは別に看護補助者が一定割合以上配置されていると「急性期看護補助体制加算」等を算定できることになっています。加算を取得している病院で必要数の看護補助者を確保できなくなると、加算を継続して算定することも困難になります。

「急性期看護補助体制加算」等の算定基礎数としてカウントできるのは、病棟に配置されているスタッフであることが必要なので、障害のあるスタッフが看護補助業務を行っていても、常に算定されるわけではありません。例えば、スタッフの所属が事務部である場合はカウントするのは難しいですが、看護部の所属という位置づけであれば、単独で病棟での仕事に従事する場合のほか、ジョブコーチの支援を受けながら複数の病棟で看護補助業務を行う場合もカウントすることが可能でしょう。

実際、障害のあるスタッフが看護補助者として貴重な戦力となっている病院も増えています。これから病院で職域開拓を考えるに当たっては、看護補助業務を視野に入れることが不可欠と言えるでしょう。