医療機関の雇用率は高い?

毎年12月に「障害者雇用状況の集計結果」が厚生労働省から公表されています。これは、障害者1人以上の雇用義務のある事業主(法定雇用率2.0%の場合は、常時雇用する従業員数50人以上の事業所)から、毎年6月1日現在の身体障害者、知的障害者、精神障害者の雇用状況について報告された結果をまとめたものです。

平成28年の障害者雇用状況の集計結果を見ると、法定雇用率2.0%が適用される民間企業の実雇用率(個々の企業で実際に雇用している障害者の割合)の全産業平均は1.92%で、前年に比べ0.04ポイント上昇しました。また、法定雇用率達成企業の割合は48.8%となり、こちらも前年に比べ1.6ポイント上昇しています。

産業別に雇用状況を見ると、「医療」のみのデータは公表されていないため、「医療、福祉」という大分類で見ると、「医療、福祉」の実雇用率は2.43%で対前年0.13ポイント上昇、法定雇用率達成企業の割合は61.8%で対前年1.9ポイントの上昇となっています。ちなみに「製造業」では実雇用率1.98%、法定雇用率達成企業の割合56.6%、「宿泊業・飲食サービス業」では実雇用率1.83%、法定雇用率達成企業の割合42.8%となっています。こうした数字を見る限り、「医療、福祉」の障害者雇用は、他の産業分野に比べても進んでいて、医療機関の障害者雇用も進んでいるように見えがちです。

しかしながら、実態はどうでしょう。労働行政に携わる方々に伺うと、各労働局における法定雇用率未達成の事業所の上位には医療業が散見されており、「医療」のみの実雇用率は全産業平均を下回る状況にあるようです。

加えて、医療業には「除外率制度」が適用されていることも考慮する必要があります。「除外率制度」というのは実雇用率を計算する際の例外ルールで、安全性等の面で障害者が働くことが難しいと考えられた業務が多い産業に対して、従業員の一定割合を分母から控除することで、雇用すべき障害者数を少なくできる制度です。このルールは、技術革新等により障害があっても安全に働ける仕事が増え、企業内で障害者が働ける様々な職域が開拓されてきたことで、合理的な存在理由が乏しいものとなってきました。そのため、制度としては既に廃止され、現在は経過措置として残っているに過ぎず、段階的に縮小されてきています。現時点で医療業に適用されている除外率は30%ですから、仮に医療業の実雇用率が全産業平均の1.9%程度あったとしても、除外率を加味しない実態ベースでは0.7掛けの1.3%程度ということになります。

除外率は将来的にはゼロになることも念頭に置き、医療機関の中で新たな職域を開拓していくことが求められています。