看護職の心に響くメッセージとは

先日、将来看護部長になるような看護幹部職員を対象とした研修会で、障害者雇用について講義させていただく機会がありました。これまで障害者雇用を意識してこなかった方が多い中で、雇用率制度等の障害者雇用に関する制度的な説明や、医療機関での障害者雇用の実例を紹介した後に、全員参加のグループワークを1時間ほど行いました。グループワークのテーマは、「自分の病院で障害者雇用を進めることになり、看護部内で障害者雇用を進める責任者となったあなたは、現場の職員に対して障害者雇用を進める意義をどう説明するか」というものです。これまでの経験も踏まえながら、皆さん熱心に議論され、各グループからの発表も大変興味深いものでした。

最初に、ノーマライゼーションや「一億総活躍社会の実現」といった、理念に訴える意見が多く出されました。現場の職員への説明内容として、こうした理念が自然に出てくる背景には、医療という公共的なサービスに従事している看護職の意識の高さを感じ、とても嬉しく思いました。

一方、現実的な意見として、障害者雇用を進めることで看護職の業務負担がどの程度軽減できるか、データで示すと良いとの意見もありました。看護職等の医療職は、日頃からデータを重視しているので、その特性に即した説明は効果的と言えるでしょう。

しかしながら、何よりも説得力があるとされたのは、「明日は我が身」という考え方でした。同僚が脳卒中やうつ病等を発症し、退職を余儀なくされた経験は皆さん少なからずお持ちのようです。障害が生じても、できる仕事を見出して働き続けられる職場であれば、誰もが安心して働けます。障害者雇用を進めることで、職場にそのような文化が定着していくことこそ、障害者雇用を進める大きな意義だろうと、皆さん感じているようでした。

それにしても、これだけ熱心に看護幹部職員が障害者雇用の意義について語り合う姿を見ると、改めて医療機関は障害者雇用にとって大きな可能性のある職場だと感じさせられます。