医療従事者の勤務環境が改善される

質の高い医療提供体制を構築するためには、勤務環境の改善を通じ、医療従事者が健康で安心して働くことができる環境整備を促進することが重要です。平成26年10月1日には医療機関の勤務環境改善に関する改正医療法の規定が施行され、各医療機関がPDCAサイクルを活用して計画的に勤務環境改善に取り組む仕組み(勤務環境改善マネジメントシステム)が導入されました。

(参考1)医療勤務環境改善の意義(リンク)

(参考2)勤務環境改善マネジメントシステムの概要(リンク)

各医療機関において、医師、看護職、薬剤師、事務職員等の幅広い医療スタッフの協力の下、一連の過程を定めて継続的に行う自主的な勤務環境改善活動が進められるよう、「勤務環境改善マネジメントシステム導入の手引き」も策定されています。手引きでは、医療従事者の勤務環境改善の例が示されていますが、特に「③働きやすさ確保のための環境整備に関する項目」の例示には、医療機関で障害者が従事している業務に関わるものが見られます。

(参考3)医療分野の「雇用の質」改善のための勤務環境改善マネジメントシステム導入の手引き(リンク)

(参考4)働きやすさ確保のための環境整備に関する項目(例)

障害者雇用が進んでいる事業所では、障害のあるスタッフが従事する仕事を切り出す過程で、業務の見直し・再編が進み、全体として業務の効率化が進んだ事例が数多く報告されています。

医療機関は、医師・看護師・薬剤師等の国家資格を持った職員が中心の組織であるため、業務効率化の効果は他産業に比べても大きいと言えます。医療スタッフが毎日行う仕事の中には、国家資格を有する職員が行う必要のないものも含まれています。一例をあげれば、点滴チューブが患者の体から抜けないように固定する様々な形状のテープは、看護師等が業務の片手間に作成している場合が多いですが、こうした作業は障害のあるスタッフが得意とする作業の一つです。障害者雇用を始めることで、こうした作業から看護師等が解放されれば、患者対応など国家資格を活かす業務に専念でき、残業も減らせるでしょう。カルテや諸文書の整理などの事務系の仕事についても、障害者雇用により専門職の負担が解放されています。

また、ベッド枠や点滴台の清掃など、日頃は手の回らない業務を障害のあるスタッフが行うことで、医療スタッフが気持ちよく仕事ができるようになり、患者家族からも評価され、病院全体のイメージアップにもつながっています。

このほか、職員の休憩室や当直室の清掃による勤務環境の改善や、障害のあるスタッフが元気に挨拶することで職場の雰囲気が明るくなるなどの効果も指摘されています。

このように、障害者雇用を進めることによって、「医療従事者の勤務環境」が改善されていけば、看護師等の離職も減り、新たな人材確保もしやすくなります。看護師等の人材確保に苦労されている医療機関の皆さんには、先進事例が示す障害者雇用を契機とした業務効率化等を通じた「医療従事者の勤務環境の改善」は、是非、意識していただきたいものです。

(参考5)看護補助業務での職域開発