医療機関が就労支援に取り組む意義

精神疾患のある者が就労について最初に相談するのは、主治医である場合が多いと言われています。うつ病の患者を始めとして、精神障害者保健福祉手帳を取得することを希望しない者も多く、障害を前提とした福祉施設や労働機関に相談に行くことに抵抗感を持つ方も多いようです。このため、医療機関には就労に向けた最初の相談窓口として、就労に至る道筋を示す役割を期待する声もあります。どのような道筋を示せるかは、本人の状況に加えて、地域の支援機関の状況によっても異なるでしょう。いずれにしても、地域にどのような施設があり、どのような機能を果たしているかを把握しておくことは、患者からの相談に応えていくのに役立つでしょう。

精神疾患のある者は、就職後も継続して通院する者が多いことから、医療機関は本人に生じる状況変化や再発等の予兆をキャッチしやすい立場にあります。その意味では、就労継続のために必要な継続的なモニタリングの重要な機能を担っていると言えます。企業や地域の支援機関から意見を求められることも多く、医療機関が就労支援を意識することは、精神疾患のある方の安定的な就労にとって非常に意味のあることです。

 

(参考)働くことの治療的効果

精神疾患のある方が一般就労に従事することについては、ストレスが高まり、再発のリスクも高まるという見方もあります。その一方で、働きたいという希望を持っている方が、本人の希望や強みを生かせる仕事で一般就労できれば、自信の回復につながり、自己評価を高めることにもなります。働くことで毎日の生活リズムが整うことは、症状の安定をもたらす効果も期待されています。その意味で、一般就労には「治療的効果」があるとも言われています。実際にこうした効果が得られるためには、就職前後だけでなく就職後の定着支援を含め、医療支援と就労支援が密接な連携のもとに継続して提供されることが大切でしょう。