固定観念にとらわれない

「うちの病院には障害者ができる仕事がない」と考えている医療機関の経営者も多いと思います。このように言われるときには、障害者に対してどのようなイメージを持っておられるのでしょうか。上下肢の障害、聴覚や視覚の障害、内部障害、知的障害や精神障害など、障害にもさまざまな種類があり、仕事をする上で抱えている困難さも一律ではありません。

車椅子の使用者にはハード面の環境整備が効果的であるなど、障害に配慮した対応をすることで、障害のない場合と同様に能力を発揮できることがあります。こうした障害別の配慮については、既に他の産業分野での膨大なノウハウの蓄積に基づいて、様々な障害者雇用マニュアル等が作成されています。これらを活用することで、障害のあるスタッフが医療機関の中で担う仕事を見出すことも可能です。

「清掃、洗濯、厨房の食器洗いといった仕事は、既に外注しているので」という声もよく聞きます。これは知的障害や精神障害のある方を雇用される場合を想定された意見のようです。確かに、知的障害や精神障害のある方が、これらの業務に従事してきた例は多いかと思います。しかしながら、医療機関の中には、これ以外に知的障害や精神障害のある方ができる仕事がたくさんあります。その中には、「職員に歓迎される仕事」が数多く含まれています。こうした職域を開拓するためには、作業の工程を整理して、障害のある職員でも無理なく確実に実施できるよう業務を切り出す作業が必要です。

障害のあるスタッフに行わせるために外注済みの仕事を内製化しても、職員は誰も歓迎しないでしょう。現在、職員が片手間的に行っている作業を障害のあるスタッフの仕事として再編するからこそ、負担から解放される職員に歓迎される障害者雇用が実現できるのです。